護国の月、「平和列車DMZ-train」に乗って楽しむ5時間の愉快な旅

投稿日d 2014-08-01 ヒット数 381

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フォーカス・京畿

6月はなぜか粛然たる気持ちになる。顕忠日(6日)をはじめ朝鮮戦争(25日)、延坪海戦(15日)と第2延坪海戦(29日)が勃発した月だから。ところが、戦争の苦しみを乗り越えて自然の偉大なる生命力を誕生させたDMZ(非武装地帯)に向かう列車が開通し、注目を集めている。5月4日に運行を開始した「平和列車DMZ-train」だ。

晴れた6月、平和列車に乗って韓国の最北端駅のトラサンで分断の歴史を振り返ると同時に、平和と和合と愛を乗せて、平壌を経てユーラシア大陸鉄道を走るという愉快な想像をしてみるのはいかが?

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◇5月4日に運行を開始した「平和列車DMZ-train」。ⓒクォン・オギョン記者

午前8時30分、ソウル駅から出発する「平和列車DMZ-train」の始発列車に乗ることにし、ホームに向かっていくところ、遠くから見える色とりどりの列車の姿に、思わず笑顔になった。

計3車両からなる小型列車は、通勤用のディーゼル電動車を改造したものだ。1号車の平和室(48席)の外観は「鉄馬は走りたい」の蒸気機関車(ミカ型)をモチーフにし、2号車の和合室(40席)と3号車の愛室(48席)の外観は、手を繋いだ人々の和合と平和を象徴する。記者が乗った車両は真ん中の和合室で、売店と放送室が位置する車両でもあるが、一番の魅力は窓に向かっている座席だった。色とりどりのかざみの模様が施された座席に座り、窓越しの風景を眺めていると、列車が徐々に動き始めた。ビルの森とマンション団地を離れた列車は、すぐに緑の田畑地帯に入った。

窓越しの風景に気をとられていると、乗務員の親切な案内放送が流れてきた。「トラサン駅の出入申請書を作成してください」ということだった。揺れる列車の中で出入申請書を作成することはかなり難易度の高いミッションだったが、無事に終えて車内を回ってみた。平和、和合、愛を意味する各国の言語、ハスの葉と花、ハートなどで飾られた華麗なインテリアに、しばらく童心に戻ったような気がした。両方の窓の上端には戦争、生態、列車をテーマに約150枚の写真が展示され、写真ギャラリーの役割も果たしていた。

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◇配られた出入証を首にぶらさげて再び列車に乗り、10分ほど走ると、やがて列車は民通線の鉄条網を通過して終着地のトラサン駅に到着した。ⓒクォン・オギョン記者

列車の売店では堅パン、戦闘食糧、おにぎりも販売

車内のモニターからは、走る列車の前後の風景がリアルタイムに広がった。まるで、自分が機関士になって走っているようだった。そうしているうちに、メッセージやリクエスト曲を募集しているので聴きたい音楽があれば売店に来て申請してくださいという乗務員のアナウンスが流れてきた。まもなく、乗客からのリクエスト曲だとして、IUがリメイクしたイ・ムンセの「愛が過ぎ去れば」が流れ始めた。

売店で販売するお弁当や堅パン、戦闘食糧、おにぎりで間食をとる乗客もいた。売店では食べ物以外にも、断たれた鉄条網、登山コップ、オープナー、パズルなどの記念品も売っていた。途中で2~3人の乗客をさらに載せた列車はやがてイムジンガン駅に着き、全ての人は下車してくださいという乗務員の指示に従って、列車から降りた。少し物々しい雰囲気のなか、憲兵の身分確認を経て「これで本当に民間人出入統制区域に入るんだ」と実感し、少し緊張した。配られた出入証を首にぶらさげて再び列車に乗り、10分ほど走ると、やがて列車は民通線の鉄条網を通過して終着地のトラサン駅に到着した。トラサン駅は北側に行ける最後の駅で、北に向かう一番目の駅だ。帰る列車時間を必ず守ってほしいと乗務員と憲兵の声を背後に、外に出た。

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◇トラサン駅は北側に行ける最後の駅で、北に向かう一番目の駅だ。ⓒクォン・オギョン記者

平和公園を回る一般観光、地下トンネル体験ができる安保観光

平和列車DMZ-trainを利用する際に選択できる観光は一般観光と安保観光の2つだ。そのうち記者が選択したのは一般観光で、トラサン駅で降りてトラサン駅とトラサン平和公園の一帯を回るコースだ。この日、一緒に列車に乗った乗客のうち一般観光を選んだのは記者一行が唯一だった。

残りの乗客は安保観光を選んだので、トラサン駅にあるチケット売り場で民北観光チケットを購入し、待機していた観光バスに乗って去っていった。彼らは第3地下トンネルとトラ展望台を回ってくると、乗務員が説明してくれた。一人取り残されたようで寂しくもあったし、どこから行けばいいか分からなくて途方に暮れていた記者に、あるおばさんが近づいてきて声をかけてくれた。

「今回は1チームだけですね。今までたくさんの観光解説をしてきたのですが、1チームに案内するのは初めてです」。珍しい機会の主人公になったことをしばらく喜んだ後、坡州市文化観光解説士のオ・スニさんの説明を聞きながらトラサン平和公園に移動した。一般観光チームには坡州市の文化観光解説士が同行してトラサン平和公園一帯を案内してくれる。

トラサン平和公園は米国のブッシュ前大統領と韓国のキム・デジュン元大統領がトラサン駅を訪問した2002年から構想を始め、2008年6月に完成した。特に「平和の森」は、平和を愛する京畿道民の寄付と献樹で造成され、意味が深い。

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◇トラサン平和公園は平和と和合を象徴する様々な展示とオブジェで構成されている。ⓒクォン・オギョン記者

ストーリーが面白い体験プログラムブック

平和公園の内部に入ると、背後に「がたん」と鉄門が閉まる音がした。「監禁されるのか?」と不安が押し寄せてきた。オさんは大したことないという感じで「出る時になるとまた開けてくれますよ」と話した。

入り口に配備された、ストーリーのある楽しい体験プログラムブック「トドとララ」を手に取っ手めくってみた。子どもたちにとって有益で面白そうな内容でいっぱいだった。プログラムブックの中身を全て体験して来ると記念品も受け取れる。「友情の壁 希望を詰める」体験場では、北朝鮮の子どもたちの安全を祈願するタイル装飾が行われていた。11月まで開かれるこのプログラムは、体験料3千ウォンを支払えばタイル1枚に好きな絵やメッセージを残すことができ、2千枚のタイルを集めて友情の壁を詰めることになる。体験料は北朝鮮の結核撲滅事業の後援金として使われる。体験場の横には、平和統一の念願メッセージを書き込んでぶらさげることができる鉄条網があった。

歴史の知識が豊富なオさんの説明を聞きながら、各種プログラムを独り占めして体験し、無人カフェ「ハナジカ売店」でコーヒー一杯の余裕を楽しんだ。今日は誰も来ていないはずの売店料金箱に、お茶代の2千ウォンを入れた。

オさんは「平和列車に乗ってきて安保観光をするには少しタイトな日程で、一般観光だけをするには時間が余る日程」だと説明した。より積極的な安保体験がしたいなら安保観光を、ゆったりとくつろぎたいなら一般観光が良さそうだ。

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◇子どもたちは体験プログラムブック「トドとララ」を通じてトラサン平和公園をより楽しく見て回ることができる。中身を全て体験すると記念品も受け取れる。「友情の壁 希望を詰める」体験場では、北朝鮮の子どもたちの安全を祈願するタイル装飾イベントが11月まで行われる。ⓒクォン・オギョン記者

多くの外国人観光客で賑わうトラサン駅

いつの間にか11時50分になった。出発20分前まで着くようにという乗務員の話を思い出し、トラサン駅に向かった。静まり返っていた午前とは違って、トラサン駅は多くの外国人観光客で賑わっていた。彼らはここで何を見て感じるだろうか。再び乗ったDMZ-trainは、午前よりはるかに楽に感じられた。乗務員も「午前は出入申請書の作成案内などで奔走するが、ソウル行きの列車ではずっと余裕がある。様々なイベントが用意されているのでお楽しみに」と、乗客を盛り上げた。

車窓越しに、朝鮮戦争の際に破壊されて橋脚しか残っていない旧イムジンガン鉄橋が、あの日の苦痛を物語るように、爆撃された姿そのままに立っていた。朝鮮戦争の当時、韓国軍捕虜1万2千人余りが南に戻ってくるときに渡った自由の橋も、あっという間に通り過ぎた。列車が出発してまもなく、地雷を探してくださいという乗務員のアナウンスが流れ、各号車の乗客たちは地雷探しに奔走した。地雷を発見した乗客には記念品が手渡された。

ソウル行きの列車の中でも、乗客からのメッセージとリクエスト曲は相次いだ。「母があれほど懐かしがっていた故郷を、一人で眺めて帰ります」というある乗客の切ないメッセージに、列車の中はしばらく静かになった。メッセージとリクエスト曲が続く間、乗客の記念撮影が行われ、一番よく撮られた人にはプレゼントを贈呈する時間もあった。帰りの記者も活気に満ちていた。ソウル駅に着くと、午後1時15分過ぎだった。5時間足らずの時間が夢のように過ぎ去ったような気がした。

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◇5月4日、「平和列車DMZ-train」の初運行を皮切りに、中止されていたトラサン駅の一般観光が再開された。ⓒクォン・オギョン記者

TIP DMZ平和列車DMZ-train過去現在

2002年開通2010年中止、今年再開

5月4日、「平和列車DMZ-train」の初運行を皮切りに、これまで中止されていたトラサン駅の一般観光が再開された。トラサン駅の一般観光は6・15南北共同宣言に基づき、2002年4月にトラサン駅を開通し、一日6回安保観光列車を運行して年間5万人以上の観光客が利用するなど、韓国の代表的な安保観光地の一つだった。だが、2009年に起きた観光客事故で2010年6月4日に一般観光が中止され、観光客は約5千人規模に急減、トラサン平和公園は暫定閉鎖されてきた。これまで京畿道と第1歩兵師団、統一省(南北出入事務所)、坡州市、韓国鉄道公社、京畿観光公社は、朝鮮半島統一への念願を象徴する場所であるトラサン駅の一般観光再開を目指して地道に取り組んできた。

数十回にわたる協議の末、2012年12月28日、「トラサン駅一般観光推進共同協約書」を締結し、翌年の2013年3月4日、各機関別の協力事項の誠実な履行に向け「トラサン駅一般観光再開履行合意書」を締結した。その後、韓国鉄道公社の観光専用列車(平和列車DMZ-train)の改造を完了し、1師団の現場確認を経て、トラサン駅の一般観光再開が最終的に確定し、5月4日に初の正式運行が行われた。

平和列車DMZ-trainは、一日2回ソウル駅を出発(08:30、13:40)し、ヌンゴク駅、ムンサン駅、ウンチョン駅、イムジンガン駅を経てトラサン駅を往復運行し、周辺景観の説明や近隣観光地のPR映像上映など様々なイベントが行われる。運賃は週末ベースでソウル駅→トラサン駅は片道8900ウォン、イムジンガン駅→トラサン駅は片道5000ウォンで、一日自由に列車を往復利用できる「DMZプラス券」を1万6千ウォンで販売する。平和列車DMZ-trainでトラサン駅を訪問するには、住民登録証か運転免許証など身分証の持参が必要。DMZ-trainに搭乗すれば民通線出入のためイムジンガン駅で観光客全員の身分を確認するからだ。身分確認が完了すれば、トラサン駅とトラサン平和公園を無料で観覧でき、トラサン駅で坡州市民北観光チケットを購入すれば連携バスを通じて第3地下トンネルやトラ展望台など従来通りの民北観光が可能だ。一方、京畿道と京畿観光公社は観光客を迎えるためにトラサン平和公園をリニューアルし、公演を楽しく観覧できるよう「体験プログラムブック」と「友情の壁」のプログラムを用意している。

ⓒ 京畿Gニュース | ハン・ジニ記者

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